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へべれけ

ゲームとDTMと本と煙草と酒と泪と男と女

鉄血と硝煙のエレクトリカルパレード -アサウラ 「デスニードラウンド ラウンド3」-

書評

どこかで見たことあるようなマスコットキャラクターの姿をしたフリークスと女子高生傭兵が愉快痛快な銃撃戦を繰り広げるラノベもこれでカーテンコール。
最終巻だけあって狂気と下劣さに胸糞悪さマシマシ、そして銃弾おかわり自由といった内容だ。ユリは自分だけではなく大切な友人、そして両親の存在をも辱められることになる。
あと、トロいけど多少はまともな奴かと思った大野が今回最高にクズっぷり&間抜けっぷりを発揮していたので、株はストップ安。これだから童貞は。


今回ユリたちの傭兵チームはいよいよタイトルにもなっている浦安にあるテーマパーク「デスニードラウンド」及びその中の会員制クラブ「クラブ666」への潜入調査を依頼される。
戦闘の発生しないただの偵察。それでも準備は万全だった。にも関わらず、松倉とユリたちは「デスニードラウンド」の正体とも言える醜悪さとニッティーの毒牙にかかる。まるで人間性そのものを否定するかのような仕打ちを受け、ついに松倉とユリたちは敗走の憂き目に遭ってしまった。

だが松倉たちはこれで黙ってはいない。あろうことか同行者にコケにされた松倉はデスニードラウンドへの報復を決意。その際に昔馴染みの傭兵仲間を片っ端から招集したことから、死んだ魚の目をしながらも怒髪天を衝いていたことがわかる。武島も前回登場した強化外骨格「ギア」を引っさげてきて、大野は特に何もしてない。
かくして繰り広げられる鉄と血と銃声と硝煙のエレクトリカルパレード。ゴミクズどもと化け物どもにさんざ傷めつけられた後に、報復としてそいつらを片っ端から蜂の巣にしていくカタルシスは、このラノベのメインディッシュとも言える。

特に痛快なのが、この時松倉が呼び寄せた昔馴染みの傭兵仲間というのが、揃いも揃って大事なネジをどっかに落っことしてきたような連中ばかりであることだ。
マシンガンのように繰り出される彼らのスラップスティックで狂ってるとしか思えないような、それでも痛快な言動は、ある意味直前までニッティーにボロボロに打ちのめされたユリと読者の心に対する癒やしとも言える。

殺す価値の無い連中も、戦術的な面からちゃんと殺していけ

そして再度デスニードラウンドに突撃し、報復をしかけるユリと松倉たち。終始松倉たちの総力戦による報復は悲壮感のないお祭り騒ぎや蹂躙とも言えるが、それでも常に油断ならない張り詰めた緊張感の描写は秀逸。
その中でクラブ666での陰惨なパレードを見て愉悦に浸っていた頭からつま先までうんこでできてるような下衆どもによって、否が応でもユリは人間の底を見せつけられる。
ロナウダとP君、彼らは確かに化け物だったが、彼らも何も化け物になりたくてなったわけではなく彼らには彼らなりの悲哀があった。
ニッティーの狂気も、それは世界に対する絶望と悪夢によってもたらされたものだ。だからこそ「ハピデス=幸福な死」として死こそが救済だと考えていた。
だけど、そのニッティーの狂気を見世物として享受していたクラブ666の会員たちは果たしてどうなのだろうか。奴らの悪徳には何ら美学も何も感じられない程度の低いものだった。
だからこそ、ユリやメイフォンの友情、松倉や武島の闘志と不器用な優しさが際立っている。大野はポンコツだからどうでもいい。
冷めた高級コース料理よりも、暖かい鍋料理のほうが優しい。


物語のクライマックス。デスニードラウンドとニッティーが辿る結末は、これまで狂った夜を繰り広げてきたとは思えないほどに静謐なものだ。
最早既に使い古されたようなテーマだが、果たして人間と化け物、本当に化け物なのは一体どちらなのか。

あと船橋市の非公認マスコットの「ふなむっしー」とその命を狙うヤンとマーの傭兵兄弟も出るよ。楽しいね!

何がハピデスだ、幸福な死こそ救済だ。温かい飯を喰え。酒を飲め。高速道路に転落して死にかけようが蟹を喰え。

ともあれ、法律的にもマジでギリギリの綱渡りだったという「デスニードラウンド」も今回が最終巻となる。
読んでるこっちも精神が磨り減りつつ高揚させられた挙句に空きっ腹を抱えさせられるという、いろいろな意味で難儀で面白い名作だった。
できるならもう少し続けて欲しかったとも思えるが、この短さだからこそ面白かったのかもしれない。昨今の深夜ラノベ原作アニメとはだいぶ毛色が違うので、是非ともアニメでも楽しみたいとは思うけど。

デスニードラウンド ラウンド3 (オーバーラップ文庫)

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