へべれけ

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やるよ。女はそういう生き物だから -伊藤ヒロ 峰守ひろかず 「S20 戦後トウキョウ退魔録」-

ノベルゼロというカドカワから「おっさん向けラノベ」というコンセプトで新しいレーベルが創刊された内の1冊から。ラインナップを見ると最近流行ってきたMW文庫のようなライト文芸をもうちょい尖らせたノリなのかもしれない。。
ここ最近、戦後混乱期の文化史に興味がある。戦後復興のために沸き立つ力強い希望あるいはカオスと、昨日とはまるで逆転した価値観に戸惑い絶望あるいは退廃が同席していた時代だ。

昭和20年代。敗戦の傷痕が残る東京を舞台に、史実の影に暗躍したとされる巨大な鉄人や金色の黄金バッド骸骨や妖怪たちの謎に挑む不死とサイボーグの退魔師コンビの活劇作品だ。

仰々しいカバー絵と語り口は伝奇モノと歴史モノの重み溢れるシリアス、かと思いきや

これ真面目に読んじゃいけないやつだ!
本格的な伝記を期待すると肩透かしを食らうやつです。むしろ肩の力抜いて、主人公である刀ノ字、呆ノ字、そして姫が真面目にシュールなシリアスに立ち向かっていくのを楽しんで読み進めたほうがいいです。

特に「ロズウェル1947」でのオチにばっかじゃねーのw とニヤけるしかない。
その一方で「虫ずもう」では女の仄暗い底の見えない恐ろしさ、おぞましさを描いていたりもしている。タイトルの「女はそういう生き物だから」というセリフもここから抜粋している。

話の形式としてはいくつかのエピソードを一冊にまとめたものだ。S20ということで昭和20年と思いきや、昭和25年くらいまで範囲を広げている。つまり戦後混乱期の下山事件スパイ・ゾルゲといった実際に起きた事件やそれに伴う虚実やオカルトを元に三日三晩煮込んでみました、といった具合だ。
それど同時に戦後混乱期に生きる人間の悲哀を描いている。進駐軍に妻と娘の身体を売らなければならない男、未来に絶望しここじゃないどこかへ連れて行って欲しいと懇願する少年、戦争が終わったという希望を見いだせなかった者たちの絶望と退廃がこの作品に影を落としている。

大真面目な顔でシュールでとんでもないことをやっている、というのが好きならオススメの一品。